親から受け継いだ家、どうする? 実家の処分と活用法
第4回:実家を民泊にする場合
民泊とは? 旅館業との違いも解説
相続した実家の活用方法として注目されているのが「民泊」です。空き家となった実家を宿泊施設として活用すれば、継続的な収入源となるだけでなく、地域活性化にも貢献できます。この記事では、旅館業との違いや民泊の制度について詳しく解説します。
「民泊」とは、空き家や使っていない住居を旅行者などに有料で貸し出す宿泊サービスのことを指します。代表的なものとしては、Airbnbなどのプラットフォームを活用した形態が挙げられます。
民泊には、以下のような形態があります:
- 住宅宿泊事業(民泊新法):年間180日以内の営業が可能。届出制。
- 簡易宿所営業(旅館業法):日数制限なし。許可制。
- 特区民泊:国家戦略特区で認められた地域限定の制度。条例で定められた要件に基づく許可制。
- 現在、特区民泊の対象となっている主な自治体は以下の通りです:
- 東京都大田区
- 大阪市
- 北九州市
- 新潟市
- 千葉市
- 北海道(札幌市など一部地域)
- 特区民泊は、通常の民泊新法よりも柔軟な運営が可能ですが、各自治体ごとに異なるルールや申請条件があるため、詳細は自治体の公式サイトでご確認ください。。
- 現在、特区民泊の対象となっている主な自治体は以下の通りです:
どの制度を利用するかによって、手続きや運営方法が大きく異なるため、実家を活用する際には最初に確認が必要です。
詳しくは以下のリンクをご参照ください:
観光庁 民泊制度ポータルサイト
民泊という選択肢はアリ?
実家の空き家を活用し、民泊として収益化する方法は近年注目を集めています。副収入を得たい方や、物件の活用方法に迷っている方にとって、有力な選択肢となるでしょう。
実家の場所や使い方によっては、民泊が高収益を生む可能性があります。ただし、誰にでも向いているわけではありません。
✅ 民泊が向いているケース
- 観光地やアクセスの良い場所にある
- 短期間の貸し出しで収益を上げたい
- 空き家を有効活用したい
- 住宅宿泊事業(民泊新法)を活用して、初期投資を抑えつつ運用を試したい方
- 将来的に売却や賃貸に切り替える柔軟性を持ちたい方
民泊新法を利用すれば、比較的少ない初期費用で運用が始められ、建物の構造変更も少なくて済むため、後から売却や通常賃貸に転用することも容易です。「まずは試してみたい」という方にとって、非常に取り組みやすい制度です。
❌ 民泊が難しいケース
- 住宅地で規制が厳しいエリアにある(旅館業法の場合)
- 運営に手間をかけたくない
- 継続的な収益が安定しにくい
- 長期的な事業化を考えていない(スポット的な活用希望の場合)
民泊は運営の手間がかかる分、一般的な賃貸よりも高収益を期待できる可能性がありますが、その分、地域のルールや制度への理解、運営の工夫が求められます。
また、民泊に関する実践的な情報や事例を知りたい方は、民泊.hub のサイトも参考になります。運営のヒントやノウハウが豊富に掲載されています。
初期費用はどれくらいかかる?
民泊の初期費用は運用形態や立地条件により異なりますが、費用感を事前に把握することで、資金計画を立てやすくなります。実家を民泊化する際の重要な判断材料です。
民泊を始める際には、制度ごとに初期費用がかかります。以下は一般的な目安です(家具、備品などを除く)
- 住宅宿泊事業(民泊新法):
- 届出書類の作成・サポート費用:約5~10万円
- 火災報知器や備品など設備費:約10~20万円
- その他(保険、登録支援):数万円
- 合計目安:約20~30万円
- 簡易宿所営業(旅館業法):
- 建物用途変更や建築確認申請:約10~30万円
- 消防設備(誘導灯・スプリンクラー等)設置:約30~100万円
- 許可申請・設計士・行政書士への依頼費用:約20~40万円
- 合計目安:約60~150万円
必要費用は物件の構造や規模、エリアの条件によって異なるため、事前に見積もりを取ることをおすすめします。
実家を民泊にするまでのステップ
民泊を始めるには、法規制や物件準備、集客手段などを段階的に整えていく必要があります。順を追って計画を立てることで、スムーズな開業が可能になります。
1. 法規制を確認する
まずは、お住まいの自治体の民泊条例や規制を確認しましょう。民泊を行うには、法律に則った届出や許可が必要です。対象となる主な制度は以下の通りです:
■ 住宅宿泊事業(民泊新法)
- 年間180日までの営業が可能な制度で、主に住居として使用している物件が対象となります。
- 多くの自治体では、住宅地でも届出が可能ですが、用途地域(第一種・第二種低層住居専用地域など)によっては制限される場合があります。
- 事前に地域の条例で営業可能なエリアを確認しましょう。
- 準備として必要なもの:
- 火災報知器、避難経路の確保
- 宿泊者名簿の管理体制
- 管理者の選任(不在時も対応できる体制)
■ 簡易宿所営業(旅館業法)
- 営業日数の制限がなく、より本格的な運営をしたい方向け。
- 用途地域によって営業可能エリアが決まっており、「商業地域」や「準住居地域」が中心です。住宅地での許可は原則困難です。
- 準備として必要なもの:
- 建物の用途変更申請(必要な場合)
- 消防法に基づく設備(スプリンクラー・誘導灯など)
- 衛生設備や面積の基準を満たすこと
詳しい手続きや制度比較については、観光庁の民泊制度ポータルサイト をご参照ください。
2. 物件の準備
- 家具・家電の設置、オートロック、Wi-Fi環境の整備
- 宿泊者が快適に過ごせる空間を演出
- 清掃・ゴミ出し・リネン交換などのオペレーション体制を整備
3. 民泊サイトに登録
- Airbnb、楽天LIFULL STAY、Booking.comなどに物件情報を登録
- 魅力的な写真と説明文を用意
4. 価格設定とマーケティング
- 周辺の宿泊施設と比較し、競争力ある料金を設定
- SNSやレビューを活用して認知を広げる
5. 運営・ゲスト対応
- 予約管理や問い合わせ対応の体制構築
- 鍵の受け渡し、トラブル対応などの仕組みを明確に
民泊運営を成功させるポイント
民泊は始めて終わりではなく、運営の工夫こそが成果を左右します。法律遵守・手間の軽減・集客強化の3本柱で、継続的な利益を目指しましょう。
✅ 法律を守る
- 届出や許可を確実に行う
- 近隣住民との良好な関係づくりが重要
✅ 運営の手間を軽減する
- 清掃・管理は外部委託で効率化
- 自動チェックインなどのITツールを導入
✅ 集客力を高める
- 高評価レビューの積み重ね
- 丁寧なゲスト対応でリピーター獲得
まとめ
民泊は、実家の資産を眠らせずに生かす手段として魅力的です。収益化だけでなく、地域とのつながりや新たなライフスタイルの発見にもつながる可能性があります。
- 実家を民泊として活用することで高収益の可能性も
- しかし、法律・手続き・運営面の課題をクリアする必要がある
- 自分にとって無理のない形で、実家を有効活用する選択肢を検討してみましょう
次回予告
第5回では「実家を処分する際の税金と費用について」詳しく解説します。
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