親から受け継いだ家、どうする?実家の処分と活用法
第6回:売却・賃貸・民泊で変わる税金の違い
親から相続した実家。処分方法を決めた後に待っているのは、手続きと税金への対応です。売却・賃貸・民泊という3つの選択肢ごとに、必要な対応や税制の違いを理解することで、より有利な形で実家を活用・整理することができます。
この記事では、選択肢ごとに税金対策とその実例を紹介します。これから実家をどうするか考えている方は、ぜひ参考にしてください。
売却を選んだ場合:譲渡所得税の計算と節税のポイント
相続した実家を売却する場合、意外と見落とされがちなのが税金の知識です。なかでも重要なのが「譲渡所得税」で、所有期間や特例の適用によって大きく金額が変わります。
不動産売却で最も注意すべきは「譲渡所得税」。相続で取得した不動産は、取得日を被相続人から引き継ぐため、長期譲渡所得として優遇されることが多くなります。
さらに、次のような特例を活用することで税負担を大幅に軽減できる可能性があります:
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 相続税の取得費加算制度
【具体例】
・被相続人が1980年に購入した実家を、2020年に相続し、2025年に2,000万円で売却。
・取得費:500万円、譲渡費用:100万円 → 譲渡所得:1,400万円
・所有期間45年 → 長期譲渡として税率20.315% → 税額 約284万円 ・特例を活用すれば、課税額がゼロになる可能性も。
【ポイント】
相続税の取得費加算制度は、相続開始日(通常は被相続人の死亡日)から3年以内に売却した場合に適用されます。この制度を使うことで、相続時に支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得を圧縮できるため、税負担を軽減できます。
▶ 国土交通省空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
賃貸を選んだ場合:不動産所得としての扱いと収支シミュレーション
相続した実家を手放すのではなく、毎月の収入源として活用したいという方には「賃貸」が現実的な選択肢になります。
定期的な家賃収入が見込める一方で、所得税や住民税などの課税対象になる点に注意が必要です。
適切に経費を計上し、確定申告を行うことで、手取りを最大化できます。
また、物件の立地や建物の状態によっては、空室リスクや修繕コストも考慮する必要があります。
収支の見通しを立てた上で、長期的な活用プランを検討しましょう。
実家を賃貸にすると、家賃収入は「不動産所得」として課税対象になります。経費を正しく計上することで税負担を抑えることができます。
【主な経費例】
- 管理費・修繕費
- 減価償却費
- 固定資産税・都市計画税
- ローン利息(ある場合)
【具体例】
・月額家賃15万円 → 年間家賃収入180万円
・必要経費60万円 → 不動産所得120万円 ・所得税(仮に10%):約12万円
・住民税(10%):約12万円 → 税負担合計:約24万円(固定資産税等は別途)
【確定申告が必要】
賃貸収入が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。
▶ 確定申告書等作成コーナー(国税庁)
民泊として運用する場合:事業所得と法的手続き
民泊は「事業所得」として扱われ、賃貸よりも複雑な手続きと高い税負担が発生する可能性があります。
また、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が増加するケースもあります。特に民泊の場合、住宅としての利用実態がないと見なされると、「住宅用地の特例(課税標準の軽減措置)」が外れ、固定資産税が最大で3倍、都市計画税が1.5倍に増額される可能性があります。
▶ 民泊は「事業所得」として扱われ、賃貸よりも複雑な手続きと高い税負担が発生する可能性があります。
また、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が増加するケースもあります。
【想定される費用】
- 清掃費・光熱費・Wi-Fiなどの運営費
- 管理委託手数料(15〜20%)
【具体例】
・1泊2万円 × 月15泊 → 年間売上360万円
・経費120万円 → 事業所得240万円 ・所得税・住民税(累進課税)対象に
まとめ:事前の準備で税負担を軽減できる
実家の処分方法によって、かかる税金や必要な手続きが大きく変わります。特に不動産に関する税金は制度や特例を活用できるかどうかで手取り額が大きく変わるため、事前のシミュレーションと専門家への相談が重要です。
次回は、処分後に必要となる「相続登記」「名義変更」「確定申告」などの手続きについて詳しく解説します。
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