防災リュックや水、食料などを日常の中で確認し、自分に必要な備えを考える様子を表したイメージ

ニュースで磨く判断力 Vol.6 防災の日。「備えているつもり」で安心していませんか?

小学生のころ、「日本沈没」というテレビドラマがありました。

日本列島が沈んでしまう。その話が、私は本当に怖かったのです。そこで私は、誰にも言わずリュックに缶詰や着替えなどを詰め込み、いざというときのために隠していました。

ところがある日、母が「缶詰がない!」と言い出しました。

当然です。犯人は私です。

こうして、私の秘密の「防災リュック」は、あっけなく露見しました。

今思えば、あれは小学生なりの防災だったのでしょう。怖い。だから、何かしておかなければ。

考え方は単純でしたが、「もしものときに困らないように準備しておく」という意味では、今の防災にも通じるところがあります。

9月1日は「防災の日」

9月1日は「防災の日」です。

1923年9月1日に発生した関東大震災をきっかけの一つとして、1960年に制定されました。

この時期になると、水や食料の備蓄、防災リュック、避難場所の確認など、さまざまな防災情報を目にします。

内閣府は、食料や飲料水、携帯トイレなどについて、最低でも3日分、できれば1週間分程度を備蓄することを呼びかけています。

また、家族との安否確認の方法や避難場所、ライフラインが止まった場合の対応などを、あらかじめ確認しておくことも大切です。

【外部リンク】
内閣府「令和8年度 防災週間」
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/week/r8bousaiweek.html

もちろん、こうした目安を知ることは大切です。

ただ、1週間分そろえたら「これで防災は完了」と言えるのでしょうか。

ここからが、今回考えてみたいことです。

防災用品は「持っている」と「使える」で違う

非常食を買った記憶はある。でも、どこに置いたでしょう。

水も買ってある。でも、何本残っているでしょうか。

モバイルバッテリーは持っている。でも、今すぐ使えるだけ充電されているでしょうか。懐中電灯はある。でも、電池は大丈夫でしょうか。

防災用品は、一度そろえると安心してしまいがちです。

けれど災害は、防災用品を買った直後に来てくれるわけではありません。

大切なのは、買ったことではなく、今日何かが起きても使える状態にあるかどうか。

そう考えると、防災は「何を買うか」だけの問題ではなくなってきます。

アメリカに住む従姉妹はローリングストック

アメリカに住んでいる従姉妹たちは、食料品や水をかなりきちんと管理しています。

万が一に備えて多めに持ちながら、古いものから普段の生活で使い、使った分を補充する。いわゆる「ローリングストック」です。

これは従姉妹たち独自の方法というわけではありません。

農林水産省も、普段食べている食品を少し多めに買い置きし、古いものから消費して、使った分を買い足すことで一定量の備蓄を保つ「ローリングストック」を紹介しています。

【外部リンク】
農林水産省「簡単!ローリングストック」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/chapter02.html

防災用として買ったものを、リュックや箱の中に何年も置いておくのではありません。

普段食べているもの、普段飲んでいるものを少し多めに持ち、それを日常生活の中で循環させています。

この話を聞いたとき、私が小学生のころに作った「秘密の防災リュック」とは、ずいぶん違うなと思いました。

私は怖くなって、家にあった缶詰をリュックに詰めて隠した。

従姉妹たちは、特別な「防災」として切り離すのではなく、普段の暮らしの中に「備える」を組み込んでいる。

備えるとは、たくさん持つことではなく、必要なものを必要な状態で保っておくことなのかもしれません。

必要な防災の備えは、みんな同じではない

もう一つ考えておきたいのが、「自分には何が必要なのか」です。

一人暮らしと、小さな子どもがいる家庭では違います。高齢者がいる、ペットがいる、毎日飲まなければならない薬がある。暮らしによって、困ることは変わります。

マンションの高層階なら、停電でエレベーターが止まったときのことも考える必要があります。

車をよく使う人なら、自宅だけにすべてを置いておくことが最適とは限らないでしょう。

つまり、確認したいのは「世間では何日分必要と言われているか」だけではありません。

自分の暮らしで、止まったら困るものは何か。

そこから逆算すると、自分に必要な備えが見えてきます。

今回の判断軸|必要なものが、使える状態で続いているか

今回の判断軸は、

「どれだけ持っているか」ではなく、「自分に必要なものが、使える状態で続いているか」。

まず、自分の暮らしを確認してみます。

もし今日、水道が止まったら。電気が止まったら。スマートフォンが使えなくなったら。いつもの店で食料が買えなくなったら。

自分は何に一番困るでしょうか。

それが分かれば、次に取る行動も変わります。

水を買い足す。

非常食を入れ替える。

モバイルバッテリーを充電する。

普段食べる食品を少し多めに買って、ローリングストックを始める。

家族と避難場所や連絡方法を確認する。

あるいは確認した結果、「今の備えで大丈夫」と判断することもあるでしょう。

大切なのは、誰かの防災リストをそのまま真似することではありません。

何が必要かを確認したうえで、自分に必要な行動を選ぶこと。

それが、自分の暮らしに合った防災の備えにつながるのだと思います。

防災は、不安を大きくするためではない

災害のニュースや映像を見ると、不安になることがあります。

不安になると、「何かしなければ」と思います。そして、防災用品をたくさん買えば安心できるような気もしてきます。

でも、防災の目的は、不安に押されて物を増やすことではないはずです。

何が起きたら、自分は何に困るのか。
そのために、今できることは何か。

そこまで考えて、必要なものを選ぶ。

防災とは、災害への不安をなくすことではなく、いざというときに自分で判断できる状態を、普段からつくっておくことなのかもしれません。

迷ったときに「何を確認して、どう決めるか」については、こちらでもまとめています。

【内部リンク】
「迷ったときの決め方」シリーズまとめ
https://orbague.com/mayotta-kimekata/

あなたなら、今日何を確認しますか?

小学生の私は、「日本が沈む」と怖くなって、とりあえず家の缶詰をリュックに詰めました。

あれから50年以上。

今なら、ただリュックに詰め込むのではなく、**「私の暮らしでは、何が止まったら一番困るだろう」**と考えるところから始めたいと思います。

9月1日の防災の日。

新しく何かを買う前に、家にあるものを一度確認してみる。そして、自分の暮らしに本当に必要なものを考えてみる。

あなたなら、今日何を確認しますか?

投稿者プロフィール

秋吉美和
秋吉美和
有限会社オールバーグ代表。企業・学校で27年以上、延べ1万人以上の人材育成に携わる。「人生の判断に、納得を。」をテーマに、自分で考え、納得して判断するためのヒントを発信しています。