ちゃんと伝えた“つもり”
第2回|良かれと思っていたのに

「良かれと思っていたのに」と思ったことはありませんか

母から教えられたことがあります。誰かが車で迎えに来てくれるときは、5分以上前には外で待っていなさい。道路状況は読めないし、到着した相手を待たせる方が失礼だから、という理由でした。

私はずっと、それが当たり前だと思っていました。だから迎えに来てもらうときは、少し早めに外へ出ます。相手を待たせたくなかったからです。

ところがある日、友人から思いがけないことを言われました。

「近くまで来たら電話するから、それまでは家にいて」

理由を聞くと、「外で待たれると、待たせてしまったんじゃないかと気になる」と言うのです。

私は驚きました。私は相手を気遣って外で待っていたつもりでした。でも友人は、外で待たれることで気を遣っていたのです。

親切の形は人によって違う

この出来事は、私にとって小さな驚きでした。待たせないために外で待つことが、私にとっては親切でした。でも友人にとっては、家の中で待っていてくれる方がありがたいことだったのです。

どちらも相手を思っています。どちらも悪気はありません。それなのに、受け取り方は正反対でした。

考えてみると、こういうことは日常の中にたくさんあります。早めに連絡することが親切だと思う人もいれば、確定してから連絡する方が迷惑をかけないと思う人もいます。先回りして準備することを気遣いだと思う人もいれば、勝手に進められると困ると感じる人もいます。

親切は、相手のためにしているようでいて、実は自分の当たり前から生まれていることがあります。

「良かれと思って」がすれ違う理由

「良かれと思っていたのに」と感じるとき、そこには少し残念な気持ちがあります。相手のためにしたつもりなのに、思ったように受け取ってもらえなかった。感謝されるどころか、かえって相手に気を遣わせていた。そう気づくと、少し力が抜けます。

ただ、このすれ違いは、どちらかが間違っているという話ではありません。育ってきた環境や、親から教えられたこと、これまでの経験によって、「これが親切」という基準は人それぞれ違います。

私の場合、迎えに来てもらうなら外で待つことが礼儀でした。友人にとっては、相手を急がせないことが気遣いでした。同じ場面を見ていても、大事にしているものが違っていたのです。

だから、「なんでわかってくれないの?」と思う前に、一度立ち止まる必要があるのかもしれません。自分の親切が、相手にとっても親切とは限らないからです。

私自身も見落としていたこと

この友人の一言で、私は自分の当たり前が、誰にでも当てはまるわけではないと気づきました。

私は「待たせないこと」を大事にしていました。でも友人は「待たせていると思わせないこと」を大事にしていました。

どちらも相手への配慮です。けれど、配慮の向きが違うのです。

これは、仕事でも家族でも起きることだと思います。相手のために先回りして動いたつもりが、相手には負担になることがあります。黙って見守っているつもりが、相手には無関心に見えることもあります。

私たちはつい、自分の気遣いは相手にも伝わっていると思ってしまいます。でも実際には、伝わるどころか、違う意味で受け取られていることもあります。

「良かれと思っていたのに」と感じたときの対処法

もし次に「良かれと思っていたのに」と感じることがあったら、自分の親切が相手にとっても親切だったのかを一度考えてみてもいいのかもしれません。

私が意識していること

  • 自分の親切を相手の正解だと思い込まない
  • 「私はこうした方がいいと思っていた」と言葉にしてみる
  • 相手がどう感じるかを聞いてみる
  • 受け取り方が違っても、すぐに否定されたと思わない
  • 親切の形は一つではないと考える

たとえば、「私は待たせたら悪いと思って外で待っていたんだけど、家にいた方がよかった?」と聞いてみる。そんな一言で、相手の感じ方が見えることがあります。

大切なのは、自分の親切を引っ込めることではありません。相手との間で、どんな形が心地よいのかを確認することです。

まとめ|親切のつもりがすれ違うこともある

「良かれと思っていたのに」という気持ちは、少し寂しいものです。相手のためにしたつもりだったからこそ、違う受け取り方をされると戸惑います。

でも振り返ると、親切の形は人によって違います。待たせないことを大事にする人もいれば、待たせていると思わせないことを大事にする人もいます。

もし次に「良かれと思っていたのに」と感じたら、相手を責める前に、自分の親切がどんな形で伝わっていたのかを確認してみる。それが、すれ違いを減らす一歩になるのかもしれません。

自分の当たり前は、相手の当たり前ではない。

そんな当たり前のことを、私は改めて教えてもらった気がします。


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