伝わるコミュニケーション実践講座
第9回　トラブル事例に学ぶ──叱り方・指示の出し方の失敗と成功パターン

「叱ったつもりが“パワハラだ”と言われた」
「丁寧に指示したのに、全然伝わっていなかった」
──そんな経験はありませんか？

実は、職場で起こるトラブルの多くは“性格の不一致”ではなく、“伝え方のズレ”が原因です。
コミュニケーションの中で生まれる小さな誤解が、やがて大きな不信やストレスに発展します。

厚生労働省の調査でも、離職理由の上位には「上司・同僚との関係」が常に挙げられています。
つまり、日常の叱り方や指示の出し方を見直すことこそ、最も効果的なトラブル予防策なのです。

私自身も研修現場で「伝えたのに伝わらない」「叱ったのに響かない」という悩みを多く聞きます。
その根底には、“感情”と“意図”のすれ違いがあるケースがほとんど。

本記事では、実際の現場で起きた「叱り方・指示の出し方」に関するトラブル事例をもとに、
失敗パターンと成功パターンの違いを分かりやすく解説します。
AIを活用した“伝わる仕組みづくり”のヒントも紹介します。

よくある失敗パターン３選

事例：
「また同じミスをして！」と強い口調で叱責。
→ 相手が萎縮して意欲を失う。

原因：
感情の爆発で「何を改善すべきか」が伝わらない。

改善策：
叱る前に一呼吸。「何を伝えたいのか」を整理してから話す。
行動（何を・どうすれば）にフォーカスする。

事例：
「できるだけ早めに提出して」→翌日提出。
上司は「今日中だと思っていたのに…」と不満。

原因：
具体的な期限・手順・目的が抜けている。

改善策：
「いつまでに・どの手順で・何のために」を明確に伝える。
AIツールを使って指示文テンプレートを自動生成するのも有効。

事例：
「あなたって本当に要領悪いよね」→相手が落ち込み離職。

原因：
「人」ではなく「行動」に焦点を当てる意識が欠けている。

改善策：
SBI法（Situation, Behavior, Impact）で伝える：
「昨日の会議で（状況）、発言が少なかったこと（行動）で、
チーム全体の議論が進みにくくなった（影響）」
→ これなら、人格を攻撃せず具体的に伝えられる。

1️⃣ 目的を伝える：「なぜそれを直してほしいのか」を共有する。
2️⃣ タイミングを逃さない：その場または当日中に伝える。
3️⃣ 次の行動を明確にする：「次からはこうしよう」と一緒に考える。

AIを活用すれば、SBI形式の指導文を自動で整えることも可能です。
ChatGPTに「相手を傷つけずに注意する文章を作って」と指示するだけでも、伝え方の参考になります。

あなたならどう伝えますか？

部下が報告を忘れていた場合

👉 Aは感情的で萎縮を招く。
👉 Bは改善と再発防止につながる建設的な伝え方。

☐ 感情でなく行動に焦点を当てているか
☐ 目的・期限・手順を具体的に伝えているか
☐ 指摘後のフォローができているか
☐ 相手の話を途中で遮っていないか
☐ AIツールで伝え方を整える工夫をしているか

叱る・指示するという行為は、相手を動かすだけでなく、信頼関係を築くチャンスでもあります。
失敗事例を振り返り、AIツールや具体的な伝え方を取り入れることで、
「伝わらない」が「伝わる」に変わります。

👉 トラブルの原因を“相手”に求めず、“伝え方”から変える。
それが、これからのリーダーに求められるコミュニケーションです。

シリーズ総まとめ「伝える力が組織を変える──AI時代のコミュニケーション戦略」