
子どもや孫にどう想いを託す?
【相続のリアル】争わないための準備|お金より大切な“家族の会話”
はじめに
「相続」の話になると、家族が少しぎこちなくなる——そんな経験はありませんか?
本来、相続は“想いをつなぐバトン”。それでも現場で見える課題の多くは、制度そのものより**「話していなかったこと」にあります。
この回では、FPの視点でお金の基本を押さえつつ、争わないための会話の工夫と想いを形にする方法**をまとめます。
相続は「終わり」ではなく、次の世代のはじまり。お金と同じだけ、言葉を準備しておきましょう。
1. 相続にかかるお金の基本(まずは“全体像”)
ポイント:数字を知ると、不要な不安が減ります。
- 基礎控除:**3,000万円 + 600万円 × 法定相続人**
例)相続人が配偶者と子1人(2人)の場合 → 3,000万円 + 600万円×2 = 4,200万円 まで非課税の基礎控除。 - 生命保険の非課税枠:**500万円 × 法定相続人**(受取人が相続人の場合)
- 小規模宅地等の特例:自宅など一定の宅地は、要件を満たすと**評価額の大幅減(最大80%圧縮)**が可能。
- 配偶者の税額軽減:配偶者が取得する遺産は、法定相続分 or 1億6,000万円まで実質非課税に。
まずは「うちは課税対象?」を簡易シミュレーション。課税の有無が見えるだけで、会話のトーンが穏やかになります。
2. 争いを防ぐ“3つの会話術”
ポイント:金額の前に、文脈(背景)を共有する。
- 意向を早めに共有する
「自宅は残したい」「長男に管理を任せたい」など、希望の骨子を先に共有。曖昧なままが誤解の種。 - “言葉”より“場”を整える
年末年始・法要・誕生日など、自然に集まる日に短く切り出す。会議ではなく雑談から始めるのがコツ。 - 第三者を交えて“安心して話せる空間”を
感情が絡む話題だからこそ、FPや専門家が壁うち役に。家族の「言いにくい」を翻訳します。
フレーズ例:「今すぐ決めなくていいけど、私の考えを“メモ”にしておくね」
3. 法律と想いを整える:「遺言書」と「エンディングノート」
ポイント:法的効力と気持ちの言葉、役割を分けて連携させる。
- 遺言書(法的文書)
- 公正証書遺言:公証役場で作成。原本保管で安全・確実。**もっとも推奨**。
- 自筆証書遺言:自書・日付・押印が必要。*法務局の保管制度*を使うと紛失・改ざんリスクを減らせる。
- エンディングノート(想いの記録)
延命治療の希望、葬儀の雰囲気、家族へのメッセージ、デジタル遺品の整理など。法的効力はないが、家族の迷いを確実に減らす。
使い分けの合言葉:「遺言で守る/ノートで伝える」
4. よくある失敗と対策(“芽”のうちに摘む)
- 財産目録が不明瞭 → 口座・証券・保険・不動産・借入の一覧表を1枚で。更新日を記入。
- 遺言が古いまま → 家族構成や資産が変わったら改訂(3〜5年目安)。
- “生前贈与の偏り”を放置 → 贈与の事実はメモに残し、**意図(学費・住宅支援など)**を書き添える。
- 感情のすれ違い → 「ありがとう」「任せていい?」の短い言葉を意識的に。沈黙が最大の誤解。
5. 進め方チェックリスト(今日からできる3ステップ)
- 現状の見える化:相続人・主要資産・負債・保険・自宅の要件(小規模宅地の対象になり得るか)を1枚に。
- 家族ミーティング15分:集まりやすい日に“雑談ベース”で。最初は結論を出さないのがコツ。
- 文書化の二刀流:公正証書遺言の検討+エンディングノートに想いと言葉を残す。
まとめ|“相続”は家族の未来を整えるチャンス
お金の整理だけでなく、気持ちの共有があると、相続は“争い”から“リレー”へと姿を変えます。
配分の根拠と、感謝の言葉。その2つが揃うだけで、家族の心は驚くほど軽くなります。
未来を安心して生きるために——今、短い会話を1つだけ始めてみませんか。
内部リンク(シリーズ)
有限会社オールバーグでは、FPの視点から**「お金と想い」両面の相続準備**をサポートします。
- 簡易シミュレーション/財産目録づくり
- 家族ミーティングのファシリテーション
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