
第4回:介護と仕事の両立はなぜ難しい?|フリーランスが直面したお金の不安
介護が始まったとき、最初に困るのは「時間」と「お金」
「フリーランスは自由そうでいいですね」
そう言われたその日に、母から電話がかかってきました。
「まだ、これないの?」
前日に出張だと伝えたばかりでした。メモにも書いてあるはずなのに、それすらも記憶に残っていない。母の認知症が進んでいるのを、言葉の端々から実感します。胸がざわついたまま、新幹線で帰路につきました。
介護と仕事、“どちらか”を選ぶしかないのでしょうか?
介護と仕事の両立──言葉では簡単に聞こえますが、現実は甘くありません。
特にフリーランスには、会社員のような介護休暇制度は存在しません。代わりの人もいません。新しい案件は断らざるを得ず、すでに予定していた仕事すら調整し直し、開店休業状態になります。
「仕事ができない」=「収入が減る」。
でも、介護のために必要な出費は容赦なく増えていきます。
介護にかかるお金の現実とは?
介護には、見えにくいお金がたくさんかかります。
- 毎月のデイサービスや訪問介護費(数万円〜)
- 交通費や通院付き添いの雑費
- 仕事を休むことでの減収
- 精神的負担から自分の医療費も増えることもあります
施設に預けるとしても、特別養護老人ホームはすぐには入れません。
認知症の対応が可能なグループホームや有料老人ホームは、月20万円前後の出費を覚悟しなければなりません。
"介護はいつか終わる"──確かにそうです。
でも、それが1年か、5年か、10年かは、誰にも分かりません。

ダブル家計のプレッシャーにどう向き合うか?
親の生活費+介護費+自分の生活費──
フリーランスであっても、いや、フリーランスだからこそ、自分の老後資金の準備も進めておきたいものです。
でも、現実は「親を支える今」だけで精一杯。
「二つの家計を背負っている」ような感覚が、心と財布の両方に重くのしかかります。
制度を知れば、不安を減らせる|介護と仕事を両立するために
介護と仕事の両立には、制度の活用が不可欠です。ここでは、実用的な視点から知っておきたい情報と、すぐにできる行動をご紹介します。
今すぐ知っておきたい支援制度
- 自治体による見守り・訪問支援サービス(福岡市公式サイト でも紹介)
- 通院・買い物代行サービスなどの民間サポート
介護費用の月額イメージ(在宅介護の場合)
- デイサービス(週2回×4週):約12,000〜16,000円
- 訪問介護(週1回):約6,000〜8,000円
- 通院付き添いやタクシー代:月約6,000円
→ 合計:約2万〜3万円/月から始まり、要介護度が上がるとさらに増えます。
これらの詳細は、今後のブログで改めて掘り下げていきます。

地域包括支援センターに相談する前に知っておきたいこと
わたし自身、母の異変に最初に気づいたのは運転中でした。
いつも通っている道なのに、曲がり角を間違えてしまい、元に戻れなくなって周囲をぐるぐる回り続ける母。
また、知らないうちに自宅の玄関を業者に頼み、白木の柱と木目のドアにべったり茶色のペンキを塗られてしまい、高額の料金を支払っていたことがありました。
こうした異変が重なったとき、「これって普通じゃないかも」と思った瞬間が、地域包括支援センターへの相談のきっかけでした。
どんなときに相談すべき?
「まだ早いかも」と思っても、次のような症状が見られたら相談のタイミングです:
- 同じ話を何度も繰り返す
- 財布やカギの置き場所が分からなくなる
- 日付や予定が分からず混乱する
- 服薬を忘れる、または何度も飲んでしまう
これらは加齢による物忘れではなく、認知症の初期症状である可能性があります。
地域包括支援センターの探し方と相談の仕方
地域包括支援センターは、住んでいる地域ごとに設置されています。
「〇〇市 地域包括支援センター」で検索すると一覧が表示されます。
不安なときは、まず電話で相談してみましょう。「この程度で電話していいのか」と思うようなことでも、親身に話を聞いてくれます。
明日からできる“備えの第一歩”
- 地域包括支援センターで相談する(電話でもOK)
- ケアマネジャーに現状を率直に伝え、具体的な支援策を一緒に考える
- 「できること」と「できないこと」を家族内で共有し、線引きする
- 兄弟姉妹と定期的に情報を共有し、役割分担を話し合う
- 自治体の介護サービス情報ページをブックマークする
- キャッシュフロー表に「介護費用」の項目を追加してみる
- いざというときのための“預け先”(一時入所施設やショートステイ)を調べておく
そして何より、「自分が壊れてしまう前に」手を打つことが大切です。
まとめ|お金の不安が消えなくても、“減らす”ことはできます
完璧な両立を目指す必要はありません。
でも、お金の流れを把握し、制度を知り、心の余裕を確保することで、不安は確実に減っていきます。
介護が必要になってからでは遅いのです。
キャッシュフロー表に「介護費用」欄を加えて、今から準備を始めてみませんか?
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