求人票は会社を選ぶためではなく、暮らしを選ぶために読む

高校生向けの就職講演で求人票の見方を説明すると、多くの生徒が最初に見るのは給与欄です。

「基本給はいくらですか?」「ボーナスは何か月ですか?」という質問はよく出ます。もちろん大切なことです。しかし、社会人として長く働いていると、それだけでは会社選びはできないと分かります。

例えば年間休日が105日の会社と125日の会社。数字だけ見ると20日の差です。でも実際には、毎月もう一回土日が増えるような違いになります。

求人票に書かれている数字は単なる数字ではありません。その会社で働いたときの暮らしそのものです。

私は高校生に求人票の見方を説明するとき、「数字を読むのではなく、その数字でどんな生活になるのかを考えてほしい」と伝えています。


高校生が求人票の見方で最初に確認したい7つのポイント

求人票には多くの情報が載っています。しかし、最初からすべてを理解する必要はありません。

まず確認したいのは次の7つです。

① 職種

どんな仕事をするのか。毎日続けている自分を想像できるか。

② 基本給

手取りはいくらになるのか。実際に使えるお金を考える。

③ 賞与

何か月分かではなく、基本給を基準に考える。

④ 年間休日・有給休暇

どれくらい自由な時間を持てるのかを確認する。

⑤ 勤務時間・通勤時間

仕事だけでなく、一日の生活全体をイメージする。

⑥ 福利厚生

資格手当や住宅手当など、将来の自分にも関わる制度を確認する。

⑦ 離職率・定着率

長く働いている人が多い会社なのかを確認する。

これらの数字や制度を見ながら、「自分はどんな毎日を送りたいのか」を考えることが、求人票の見方の第一歩です。


① 職種を見ないで会社を選ぶとミスマッチが起きる

高校生に求人票の見方を説明していると、「有名な会社だから」「家から近いから」という理由で興味を持つ生徒がいます。

もちろん会社名や通勤時間も大切です。しかし、実際に毎日向き合うのは会社名ではなく仕事そのものです。

例えば同じ会社でも、営業職と製造職では一日の過ごし方がまったく違います。営業職ならお客様との打ち合わせや提案、外出が多く、人と話すことが好きな人に向いているかもしれません。一方で製造職は、決められた手順を守りながら製品を作る仕事です。

大切なのは仕事内容に優劣はないということです。重要なのは、自分が毎日続けられるかどうかです。

給料や休日だけを見て会社を選んでも、仕事内容が合わなければ長く働くことは難しくなります。求人票を見るときは、まず「自分はこの仕事を毎日続けている姿を想像できるだろうか」と考えてみてください。


② 基本給20万円でも自由に使えるお金は20万円ではない

高校生向けの講演で「求人票に基本給20万円と書いてあったら、いくらもらえると思う?」と聞くと、多くの生徒が「20万円」と答えます。

ところが実際には、健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税などが差し引かれます。

高卒で就職したばかりの人の場合、社会保険料と税金で額面の15〜20%程度が引かれることが一般的です。つまり基本給20万円なら、実際に口座へ振り込まれる金額は16万円から17万円前後になります。

求人票を見るとき、多くの人は「いくらもらえるか」を考えます。しかし本当に大切なのは「いくら使えるか」です。

だから私は高校生に、「求人票の給料欄を見たら、まず8割くらいで考えてみよう」と伝えています。


③ 賞与は『何か月分』ではなく基本給を見る

求人票に「賞与4か月」と書かれていると魅力的に見えます。

しかし賞与は一般的に基本給を基準に計算されます。

例えばA社は基本給16万円で賞与4か月。B社は基本給20万円で賞与3か月だったとします。

数字だけを見るとA社の方が良さそうに見えます。しかし実際には賞与額に大きな差がない場合もあります。

求人票を見るときは「賞与何か月」という数字だけに目を向けないことです。まず基本給を見る。そのうえで賞与を見る。順番を間違えないことが大切です。


④ 年間休日・有給休暇は人生で自由に使える時間

私が求人票を見るときに特に重視しているのが年間休日です。

年間休日105日と125日。数字だけ見ると20日の差です。しかし20日は約3週間分の休みに相当します。

月に換算すると、年間休日105日は月平均8.7日、年間休日125日は月平均10.4日の休みになります。

たった20日と思うかもしれません。でも、その20日で旅行に行くこともできます。趣味を楽しむこともできます。家族と過ごす時間を増やすこともできます。

さらに確認したいのが有給休暇です。法律では入社半年後に10日付与されます。しかし制度として存在することと、実際に取得しやすいことは別問題です。

休みは単なる数字ではありません。人生で自由に使える時間そのものなのです。


⑤ 勤務時間と通勤時間は毎日の暮らしを左右する

求人票を見るとき、勤務時間は確認していても、通勤時間まで考えている高校生はあまり多くありません。

しかし実際に働き始めると、勤務時間と同じくらい通勤時間は重要です。

例えば勤務時間が9時から18時で、通勤に片道1時間かかる場合、朝は7時前に家を出て、帰宅は19時を過ぎるかもしれません。

同じ勤務時間でも、通勤15分と通勤1時間では、一日に使える自由時間が大きく変わります。

求人票を見るときは、「朝何時に起きるだろう」「帰宅したら何時になるだろう」と、一日の流れを想像してみてください。


⑥ 福利厚生は『第二の給料』。価値が分かるのは就職してから

求人票を見るとき、多くの高校生は給与欄に目が向きます。

ところが卒業生たちの話を聞いていると、「もっとしっかり見ておけばよかった」と言われる項目の一つが福利厚生です。

例えば資格手当。毎月5,000円でも年間6万円です。10年間続けば60万円になります。

家族手当、住宅手当、通勤手当も同じです。高校生の頃には想像しにくくても、結婚や子育てが始まると、その価値を実感する人は少なくありません。

求人票の給料が同じでも、福利厚生まで含めると年間50万円以上の差になることもあります。

求人票は今の自分だけで見るものではありません。3年後、5年後、10年後の自分も含めて見るものなのです。


⑦ 離職率は会社からのメッセージ

例えば3年以内離職率30%と聞いても、高校生には実感が湧きにくいかもしれません。

しかし言い換えると、10人入社したら3人が辞めているということです。

もちろん離職率だけで会社の良し悪しを判断することはできません。それでも長く働いている人が多い会社には、それなりの理由があります。

職場見学では、働いている人の表情や職場の雰囲気も見てみてください。求人票に書かれている数字と、実際の職場の空気が一致しているかを確かめることも大切です。


まとめ|求人票の数字の向こう側を見る

高校生の就職活動で大切なのは、求人票の見方を覚えることではありません。

本当に大切なのは、その数字が自分の暮らしにどんな影響を与えるのかを考えることです。

基本給は手取りで考える。賞与は基本給とセットで見る。年間休日は自由時間として考える。勤務時間と通勤時間は一日の生活として考える。福利厚生は金額に換算してみる。

そうやって数字を生活に置き換えて考えることで、自分に合った会社選びができるようになります。

就職活動のときには分からなくても、働き始めてから初めて意味が分かる項目があります。

だからこそ、求人票を見るときは今の自分だけで判断しないでください。

3年後の自分、5年後の自分、10年後の自分ならどう感じるだろう。

そんな視点で見ると、求人票の見え方は大きく変わります。

求人票は会社を選ぶための資料ではありません。

未来の自分が「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための資料です。

給料だけを見るのではなく、その数字の向こう側にある暮らしを想像してみてください。


▶実際の求人票はこちら

投稿者プロフィール

miwa
miwa