
AI×人が創る職場コミュニケーションの最前線 第2回 上司と部下をつなぐAI─報連相が変わる職場フォーカスキーフレーズ
「報告が遅い」
「相談してくれない」
「もっと簡潔に伝えてほしい」
こんな“上司のストレス”が、職場のあちこちで聞かれます。
一方で部下は、こんな本音を抱えています。
「どこまで共有すればいいのか、正解がわからない」
「忙しそうで、話しかけるタイミングが難しい」
「文章に自信がなくて、報告文を書くのに時間がかかる」
──この“お互いの思い違い”が、職場のすれ違いを生んでいます。
さらに最近では、
- 上司と部下が作成した資料の内容がかみ合わない
- 会議で「そんな話は聞いていない」と言われる
- 進捗報告が曖昧で、上司の不安が高まる
といった問題も増えています。
その一方で、ChatGPTのような生成AIの登場により、
報告書やメールのたたき台は、AIが数秒で作れる時代になりました。
では、AIをうまく使えば「報連相の悩み」は解決するのでしょうか。
答えは 「半分YESで、半分NO」 です。
AIは報連相の“手間”を減らしてくれますが、
上司と部下の信頼関係をつくるのは、やはり人の言葉だからです。
事例:報告メールがすれ違う原因は“温度”の欠如
● よくあるケース
部下がAIに依頼して「進捗報告メール」を作成。
文面は整っているものの、上司は読んでモヤっとする──そんな場面です。
AI文面:
「作業は60%完了しました。今週中の完成を予定しています。」
上司の心の声:
- どの部分が終わっていて、どこがまだなのか分からない
- 60%という数字の根拠は?
- 想定どおりなのか、遅れが出ているのか不安…
AIが正しくまとめても、
「上司が知りたい情報」や「安心材料」が抜け落ちているのです。
● 人が整えた文面
「全体の60%まで完了しています。特にA工程が順調に進んでおり、
B工程で仕様変更があり、現在その調整を行っています。
完了時期は当初予定どおりで、今週中の仕上げを目指しています。」
たった数行ですが、
- 背景
- 現在の状況
- 今後の見通し
が補われ、“伝わる報告”になります。
AIが整えるのは“文章”。
上司の不安を解消し、信頼をつくるのは“人の言葉”です。
AIで強化される報連相の3つのポイント
1. 要点を素早く整理できる
部下にとって大きな負担となるのが、
「何から伝えてよいか分からない」という悩みです。
AIを使えば、
- 議事録から要点を抽出する
- 長文メールを3行に要約する
- 進捗報告の骨子を作る
といったことが、短時間で可能になります。
まずAIに“たたき台”を作ってもらい、
人がそこに肉付けしていくイメージです。
2. 上司が求める視点を“型”として覚えられる
AIに「上司が知りたがるポイント」を学習させておけば、
部下はその型に沿って報告内容を整理することができます。
例えば、AIに次のように指示します。
「この進捗内容を『現状』『課題』『リスク』『次の一手』の4つに分けて整理してください。」
こうすることで、
上司が知りたい情報の“抜け”が減り、報連相の質が揃っていきます。
3. 対話のハードルを下げてくれる
「上司が忙しそうで、話しかけにくい」
「相談したいけれど、うまく言葉にできない」
そんな時にも、AIは心強い味方になります。
相談したい内容を箇条書きでAIに入力し、
「これを、上司に失礼のない形で相談する文章に整えてください」
と依頼すれば、“最初の一歩”を踏み出しやすくなります。
AIは、上司と部下の間に入る**「クッション役」**にもなり得るのです。
【保存版】現場でそのまま使えるAI報連相プロンプト5選
ここからは、実際の職場でそのまま使える「AIへの指示文(プロンプト)」をまとめます。
Wordやメモ帳、ChatGPTなどのAIツールにコピペして使えるようにしておくと便利です。
① 進捗報告の要点整理
「この仕事の状況説明を、上司向けの進捗報告として3行でまとめてください。
『今どこまで進んでいるか』『課題』『完了見込み』が分かるようにしてください。」
② 忙しい上司向けに“30秒で読める報告”にする
「この文章を、上司が30秒で理解できるように要約してください。
箇条書きで、重要度の高い順に並べてください。」
③ 相談したい内容を、丁寧で誠実な文章に整える
「上司に相談したい内容をまとめました。これを失礼のない、丁寧で誠実なトーンの文章に整えてください。
課題・自分なりに考えた案・相談したいポイントが伝わるようにしてください。」
④ 報告の“抜け”をチェックしてもらう
「この進捗報告文を、『現状』『課題』『リスク』『次のアクション』『完了見込み』という観点でチェックしてください。
抜けている点があれば、どこに何を追記すべきか提案してください。」
⑤ 冷たく感じる文面に“温度”を加えてもらう
「この文章を、相手に配慮を感じるトーンに書き換えてください。
相手が不安にならないよう、安心できる一文を加えてください。」
こうしたプロンプトを使うことで、
AIは「文章を整えるツール」から「コミュニケーションを助けるパートナー」へと変わっていきます。
ただし、最後に文面を確認し、
「自分の言葉になっているか?」をチェックするのは、あくまで人の役割です。
AI報連相の落とし穴
AI活用が進むほど、逆に起きる問題もあります。
① AI任せで“自分の言葉”が消える
AIが作った文章をそのままコピペしてしまうと、
上司は部下の成長や思考の過程を感じ取れなくなります。
- 「本人の言葉が見えない」
- 「自分の頭で考えているのか分からない」
という違和感が、評価や信頼に影響することもあります。
② “温度の欠如”で誤解が生まれる
AIの文面は、基本的に中立でフラットです。
それが状況によっては、
- 冷たく感じる
- 投げやりに見える
- 責任回避のように受け取られる
といった誤解を生むことがあります。
あと一文、
「ご心配をおかけして申し訳ありません。」
「ご協力いただけると助かります。」
という言葉を添えるだけで、印象は大きく変わります。
③ 対話そのものが減り、関係性が弱くなる
AIが便利になればなるほど、
「文章で済ませる」コミュニケーションが増えていきます。
しかし、信頼関係を深めるのは、
雑談も含めた“生身の対話”です。
AIを使うほど、意識的に「顔を合わせて話す時間」をつくることが大切です。
上司と部下をつなぐAI活用法
では、具体的にどのようにAIを使えば、
上司と部下の信頼関係を強めることができるのでしょうか。
✔ 部下ができる工夫
- AIで要点を整理してから報告文を作る
- 「背景」「課題」「自分の考え」を1〜2行で必ず添える
- 不安な点や迷っている点を、正直に書く
- AIの文章を丸呑みせず、「自分の言葉」に言い換えてから送る
✔ 上司ができる工夫
- 部下のAI文面に対して、「ここはよく整理できているね」と努力を認める
- 「この部分をもう少し詳しく」「ここは数字で教えて」と、具体的にフィードバックする
- AIの文かどうかではなく、内容の透明性と誠実さを評価する
- 重要な話は、チャットだけでなく対面やオンライン面談の場を設ける
AIを「使っているか/使っていないか」ではなく、
AIをどう使いながら“人同士の関係”を育てていくかが鍵になります。
ケース問題
あなたは管理職です。
部下がAIで生成したと見られる、次の進捗報告メールを送ってきました。
「タスクは順調に進んでいます。予定どおり完了する見込みです。」
あなたが感じる不安はどれでしょうか?(複数選択可)
- A:どの作業が終わっているのか分からない
- B:課題があるのかどうか不明
- C:遅延リスクの有無が分からない
- D:形式的で、本人の考えが見えない
👉 多くの方がA〜Dすべてにチェックを入れます。
このケースから分かるのは、
AIが整えた“きれいな文章”だけでは、安心も信頼も生まれないということです。
明日からできる「AI×報連相」チェックリスト
☐ AIで要点を整理してから報告しているか
☐ 背景・課題・安心材料の3点を補っているか
☐ 上司が知りたい視点(現状・課題・リスク・次の一手)を意識しているか
☐ 対話の時間を意図的に確保しているか
☐ AI任せにせず、自分の言葉で最終確認しているか
まとめ
AIは、報連相の“手間”を大きく減らしてくれます。
しかし、職場の信頼関係をつくるのは、
やはり人の言葉と、人同士の対話です。
AIが文章を整え、人が意図と温度を添える。
その役割分担ができたとき、報連相は単なる情報伝達から、
チームの成長を生む「対話の時間」へと変わっていきます。
次回予告
AI×人が創る職場コミュニケーションの最前線|第3回
「AIを使う若手と、使えないベテラン──職場のジェネレーションギャップをどう埋める?」
へ続きます。
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