
AI×人が創る職場コミュニケーションの最前線
第4回 フィードバックはAIで楽になる?──評価と成長を両立させるために、人が外してはいけない視点
※この記事は、AI フィードバック/AI 評価 管理職をテーマに、現場で使える考え方と実践例をまとめています。
「フィードバックが一番むずかしい」
管理職やリーダーの方と話していると、そう口にされる方は少なくありません。
指示や報連相以上に、
- 相手の感情が絡む
- 関係性が変わる可能性がある
- 下手をすると不満や不信につながる
だからこそ、評価やフィードバックは後回しにされがちです。
そんな中、AIの活用が進み、
「評価コメントを整える」「言い回しを和らげる」「事実を整理する」
といったことが、以前より簡単にできるようになりました。
一方で、現場からはこんな声も聞こえてきます。
AIを使っているのに、なぜか評価がうまく伝わらない
丁寧に書いたはずなのに、部下の反応が悪い
この違和感の正体はどこにあるのでしょうか。
■AIでできるフィードバック/できないフィードバック
まず整理しておきたいのは、AIが得意なことと、そうでないことの違いです。
AIが得意なこと
- 行動や事実の整理
- 客観的な表現への言い換え
- 感情を刺激しにくい文章構成
- 評価コメントのたたき台作成
これらは、フィードバックの「準備段階」として非常に有効です。
AIが苦手なこと
- 相手がどう受け取るかの予測
- 関係性の背景理解
- 今、このタイミングで伝える意味の判断
- 言葉に込める期待や覚悟
AIは言葉を整えることはできますが、その言葉を「誰が・どんな責任で」伝えるかまでは担えません。
■評価がズレる職場で起きていること
評価がうまく機能していない職場では、次のようなズレが起きています。
- 管理職:公平に評価しているつもり
- 部下 :見てもらえていないと感じる
特にズレが起きやすいのは、
- 年上部下
- 外国人スタッフ
- 現場作業が中心の職種
こうしたケースでは、評価内容そのものよりも、
「何を基準に、なぜこの評価なのか」という前提が共有されていないことが原因であることが多いのです。
評価は点数や言葉そのものではなく、
「あなたをどう見ているか」「どう育てたいか」というメッセージでもあります。
■AIを使った「安全なフィードバック」の型
AIを活用する場合、次のような流れを意識すると、フィードバックは格段に安定します。
- AIで事実・行動を整理する
- いつ、何を、どうしたか
- 感情や評価を一旦切り離す
- 管理職自身が「育てたい方向」を言語化する
- 何を期待しているのか
- 次に伸ばしてほしい点は何か
- 最後の一言は人が決める
- 信頼していること
- 見ていること
- 任せたいと思っていること
AIは②までを強力に支援してくれますが、
③をAI任せにすると、フィードバックは一気に無機質になります。
■ケース:AIで整えた評価が、逆効果になった例
ケース設定
ある職場で、管理職がAIを使って評価コメントを作成し、定期面談を行いました。
- 部下は年上
- 現場経験は豊富だが、新しいやり方への適応に時間がかかっている
- 管理職としては「今後も中心メンバーとして活躍してほしい」と考えている
AIで作成した評価文は、表現も丁寧で、客観的にも問題のない内容でした。
しかし、面談後、部下の態度はよそよそしくなり、関係性はむしろぎくしゃくしてしまいます。
後から分かったのは、
- 評価の目的が伝わっていなかった
- 「なぜ今この話をしているのか」という意図が共有されていなかった
部下は「評価された」とは受け取らず、
「距離を置かれた」「線を引かれた」と感じていたのです。
評価がズレた理由
このケースでは、AIの使い方そのものが問題だったわけではありません。
問題は、
- 事実整理と
- 育成の意図と
- 管理職自身の言葉
が、分離されたまま使われていたことでした。
ケースから考える:AIで評価を整えるプロンプト例(AI 評価 プロンプト)
AIを使って評価文を作る際は、単に「評価コメントを書いてください」と依頼するのではなく、
評価の前提条件を一緒に渡すことが重要です。
以下は、現場で使いやすいプロンプト例です。
あなたは人事評価を支援するアシスタントです。
以下の情報をもとに、部下への評価コメントのたたき台を作成してください。【前提条件】
・評価の目的:改善点を指摘することではなく、今後の成長と役割拡張につなげること
・関係性:年上の部下であり、これまでの貢献には感謝している
・伝えたいスタンス:信頼していること、今後も重要な戦力として期待していること【事実・行動】
・〇月〇日の業務で△△を担当した
・品質は安定しているが、新システムへの対応に時間がかかっている【注意点】
・上から目線にならない
・人格評価は避け、行動にフォーカスする
・面談で口頭補足する前提の「文章としてのたたき台」とする
このようにプロンプトを設計することで、
AIは「評価文」ではなく、対話の土台を整える役割を果たします。
■最後に管理職が必ず確認するポイント
AIが出力した評価文を使う前に、以下をチェックしてください。
研修や面談準備の際、そのまま使える形にしています。
AI評価文・使用前チェックリスト
□ 評価の目的は明確か(是正ではなく、成長・役割拡張になっているか)
□ 相手との関係性(年齢・立場・背景)を前提に含めているか
□ これまでの貢献や努力への言及があるか
□ 人格ではなく、具体的な行動・事実にフォーカスしているか
□ 「次に何を期待しているか」が伝わる内容になっているか
□ 上から目線・評価者目線の表現になっていないか
□ 面談で口頭補足する余地を残した文章になっているか
□ 自分の言葉として声に出して読めるか
このチェックを通すことで、
AIは評価を代替する存在ではなく、
対話と育成を支える補助ツールになります。
フィードバックは「作業」ではなく、「関係性の更新」です。
AIを使うからこそ、
管理職自身が
- どう育てたいのか
- どんなチームをつくりたいのか
を言葉にする必要があります。
評価の責任は人にしか持てません。
AIは補助輪。
だからこそ、
AIを使うほど、人の関わり方の質が問われる時代になっています。
■管理職への問い
この評価を受け取ったとき、
相手は「成長の話をされた」と感じるでしょうか。
それとも、
「距離を置かれた」「線を引かれた」と感じるでしょうか。
その違いを生むのは、
評価の言葉そのものではなく、
その言葉に、どんな意図と覚悟を込めたかです。
次回は、こうした評価やフィードバックを土台にした
育成・1on1・対話のあり方について掘り下げていく予定です。
第3回 AIでズレる・整う「指示」──人は何を補うべきか?
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