【AI×人が創る職場コミュニケーションの最前線】  
【第6回】対話と信頼はAIでつくれる?──心理的安全性を支える管理職の関わり         

※この記事は、心理的安全性・対話・会議におけるAI活用をテーマに、管理職が現場で実践できる考え方と事例をまとめています。

「本音を話してほしい」と言っているのに、
現場からは当たり障りのない言葉しか返ってこない。

管理職やリーダーの方から、
そんな声を聞くことは少なくありません。

AIの活用が進み、
誰もが「それらしい正論」や「整った意見」を
簡単に言葉にできるようになりました。

しかし、
言葉が整えば整うほど、その裏にある迷いや本音は見えにくくなる──
そんな逆説が、AI時代の職場では起きています。

だからこそ今、
「対話」や「信頼」があらためて問われているのです。


◆心理的安全性とは何か(管理職が誤解しやすいポイント)

心理的安全性は「ぬるま湯」ではない

心理的安全性とは、
「何を言っても許される仲良しの状態」ではありません。

本来の意味は、
チームの成果のために、リスクを恐れず、率直な意見や懸念を共有できる状態です。

現場では、

  • 空気を読む(自己保身)
  • 波風を立てない(学習の放棄)

といった行動が優先され、
健全な衝突や対話が避けられてしまうことがあります。


◆AIで支えられる対話/支えられない対話(会議におけるAI活用)

AIは対話の「答え」を出す存在ではありません。

AIの役割は、
**対話を始めるための「呼び水(きっかけ)」**をつくることです。

AIが役立つ場面

  • 意見の整理・要約
  • 会議後の振り返り
  • 表現の調整

AIでは代替できない部分

  • 沈黙や迷いを感じ取る
  • 発言しにくい空気に気づく

心理的安全性は、
ツールだけでは生まれません。


◆対話が止まる職場で起きていること

対話が生まれにくい職場では、
次のような兆候が見られます。

  • 発言者が固定されている
  • 質問が出ない
  • 意見がまとめにくい

その多くは、
「言っても変わらない」
「言うと面倒になる」
という経験の積み重ねから来ています。


◆管理職が担う「信頼の土台づくり」

信頼関係は、
一度の対話で生まれるものではありません。

  • 話を遮らない
  • すぐに評価しない
  • 結論を急がない

こうした関わりの積み重ねが、
「話しても大丈夫」という感覚を育てます。

AIは、
対話の準備や整理を助けてくれますが、
安心できる場そのものは人の関わりから生まれます。


◆活用事例:意見が出なかった定例会議が変わったケース(会議×AI活用事例)

会議の状況

  • 週1回・60分の定例会議
  • 参加者:管理職1名、メンバー6名
  • 発言者は毎回ほぼ同じ2名
  • 他のメンバーはうなずくだけで終わる

管理職は「何か意見はありますか?」と問いかけますが、
沈黙が続き、結局いつものメンバーが話をまとめていました。

使用したAIツールとタイミング

  • ChatGPT(生成AI):会議前の論点整理
  • Google Docs/Notion:意見共有用メモ

👉 使ったのは会議の前です。

AIの具体的な使い方

管理職は会議前に、AIに次のように依頼しました。

このテーマについて、立場の異なる人が出しそうな意見を5パターン挙げてください。
賛成・慎重・反対・現場目線・長期視点を含めてください。

AIが出した意見は、
結論ではなく**「考える材料」**として事前に共有しました。

会議中の変化

会議当日、管理職はこう切り出しました。

今日は結論を急ぎません。
この中で「一番しっくり来ない意見」を教えてください。

管理職がAIを使って複数の視点を提示したことで、
メンバーの心理的ハードルは、
「ゼロから意見を出す」状態から「提示された案を選び、修正する」状態へと下がりました。

普段あまり発言しないメンバーから、
「現場だと、ここが難しいかもしれません」という声が上がり、
違和感を起点に対話が広がっていきました。


◆AI時代に問われる対話の質(心理的安全性と管理職)

AIを使うほど、
職場の対話は効率化されます。

その一方で、
「誰が話していないか」
「何が言われていないか」
に目を向けないと、
対話は形だけになります。


◆管理職への問い(心理的安全性を高める視点)

  • あなたのチームでは、「分かりました」という言葉の裏側にある表情を拾えていますか。
  • 今日の会議で、誰が話していなかったかに目を向けられたでしょうか。

心理的安全性は、
一度つくって終わるものではありません。

管理職が日々の対話で
「正解」ではなく「違和感」を歓迎し続けることで、
少しずつ育っていくものです。

この場は、
「正しいことを言う場」でしょうか。

それとも、
「考え途中でも話していい場」でしょうか。

AIを使うほど、
管理職の関わり方が、
そのまま職場の空気になります。

次回は、
こうした対話や信頼関係を支える
チームコミュニケーションの設計について、
さらに掘り下げていく予定です。

1on1や育成については、前回の記事で詳しく整理しています。↓

【第5回】育成や1on1はAIで代替できる?──管理職が人として関わり続ける意味

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